心が、ザワザワ、もやもや、とする待ち合わせ場所へ向かい電車内。
どんな再会になるのだろう。
最近、数年振りに会った母親の髪の毛が真っ白になっていた事に心底驚いたので、
今日は父親の外見の変化については大丈夫だろう。
地上に出て、オオカンザクラの下で笑顔で写真を撮影し合う観光客の横をすり抜けながら、上野公園内を北へ歩く。
あえて離れた売店のそばで、待ち合わせ時間きっかりになるのを待つ。
先日の春めいた気温から一転、めちゃくちゃ寒いので東京文化会館内に移動。
三寒四温
早く、春よ来い。
早く、春になってくれ。
待ち合わせ時間の一分前に、意を決して腰を上げた。
東京文化会館を出て、数十メートル先に目をやる。
妹の姿が見える。
妹の横にニット帽をかぶった、おばさんみたいな人がいる。
自分の中のイメージにある、
「どんなに年をとっても父親の威厳をそなえた男の風格」
を感じさせないその姿。
うん、まちがいなく久しぶりに会う父親だ。
「見ちがえったじゃないか」が彼の第一声。
俺の姿が、どういう意味で「見ちがえった」のか、聞こうかとも思ったのだが、
しょっぱなから、くだらないことで、あーだこーだ言い合うのも良くないと考えて、
「ああ、そうか」と簡潔に答えた。
「身分に不釣り合いな、いいカバン持ってるな」と続けて彼は俺に言う。
「クタクタでださださなカバンとかを身につけていたら、余計に貧乏神が寄ってくるからな」と答えた。
相変わらずみょうに鑑識眼はあるんだなと思った。
俺が伊勢丹の正月のセールで一目ぼれしたバッグに目をつけるとは。
結局、平日にも関わらず多くの人でにぎわう博物館で、恐竜の骨を見て、博物館内の土産物屋で恐竜のフィギアのガチャガチャをして、妹と俺が二個ずつ回して入手した4体のうちの3体が中国で発見された翼をもつ新種恐竜イーであったことに3人で大笑いしたあと、
精養軒でご飯を食べて想像すらしていなかったほど子供に帰っている自分が、
なぜかユニクロでカーディガンまで買ってもらっていた。しかも二着。
運命とはわからない。
あれだけ長い間憎んでいて、憎しみと怒りのあまり自○したろうかとか思っていたのがウソのように、にレストランで飲みきれなかったスパークリングワインの瓶を入れた父親のボロボロの紙袋も、ごく当たり前に持ってあげた。
現実には弱々しく老いても、知識をひけらかしたいおっさんが目の前にいた。
旅行先でAちゃんが選んだマグカップも喜んで受け取っていた。
皮肉にも妹の旦那の転勤による引越しが転機となり急きょ会うことになった。
父と会ってくれていた妹が関東から離れることになるのを聞いた時は、
「今後、あいつに何か会ったときは、誰が面倒見るんじゃー」と予期せぬ展開にアタマがクラッとした。
しかし九州のとある場所に続き、軽井沢にも土地を買ったとかもうむちゃくちゃ。
自分の金だからどんな使い方をしようが自分の勝手だとか言われても、
以前みたいに詐欺商法にひっかかったり、バブル崩壊後に株でどかーんと溶かしたりされても、見ているこっちとしては口を出さない訳にはいかんのよ。
20万以上したというパソコンも、「あまり使ってないので、やろうか?」とか、そういうところも何も変わっていない。
相変わらずモノ、金で優しさを伝えようとする。
違うんだ。
そういう優しさではないんだ。俺が求めていたことは。
(ノートPCは欲しいけどな。。。)
三人で公園内を歩く。
父親が花が咲いている木の名前を知っているか訊いてくる。
会う前に木の名前を確認していたので答える。
「オオカンザクラ」
「えー、違うだろダイカンザクラだろ。暦では大寒ダイカンなのだから」とおっさんは言う。
こういう細かいところもあいかわらずだ。。。
自宅に帰り、父親にビデオレターを作ってくれたAちゃんに、今日あった一日を報告した。
Aちゃんも、俺の運命の一日が、平和に楽しく過ごせた事を心から喜んでくれていた。
Aちゃんも、ダイカンザクラ、オオカンザクラの下で父親がAちゃんに宛てて作成したビデオレターを見て嬉しそうだった。
これがAちゃんが初めて見る俺の父親の姿。
妹はAちゃんに、父親は普段の二倍の速さで動画の中で話しているよ、とメールで説明してくれたらしい。
妹が関東を離れるのはまもなく。
俺と父親の関係はどうなっていくのか。
